【書評】マネーボール〜奇跡のチームを作った男〜
オークランド・アスレチックスの快進撃の舞台裏を描いた傑作でございます。
- 作者: マイケル・ルイス,中山宥
- 出版社/メーカー: 武田ランダムハウスジャパン
- 発売日: 2006/03/02
- メディア: 文庫
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この本の主眼は、野球に科学を持ち込んだということ。今、その数理学はセイバーメトリクスというジャンルになっておりMLB.comのサイトでは当然のごとくその指標を見ることが出来るのですが、アスレチックスのビリー・ビーンがその理論を実践するまでは単なるトンデモ扱いでした。
このセイバーメトリクスの原型となったのは偏狭的な野球好きだった人間が従来の評価指標に対して論文を書いたことで、統計学・数学者といったアカデミックな方々の興味を引いたという、ちょっとオープンソース的な発展の経緯をたどっていることが本書から伺えました。
マネーボールから学ぶことは、能力ほど主観的な指標は無いということでしょう。能力というのはボールを遠くに飛ばせる、速いボールを投げることが出来る、足が速い・・・そういった類のスキルのこと。でも、それを野球のゲームに活かしチームの勝利に導かせる為には、理論が必要になります。なぜなら、野球のイニングは3アウトで終わってしまうから。ビリー・ビーン自身が能力ベースの評価指標のある意味被害者であったから、数理的な考えを野球に持ち込むことが出来たんだと思います。
なので、アスレチックスの基本的な考え方は、出塁率は長打率に優るというもの。長打を打つ確率より出塁する確率が高いほうがアウトカウントは増えないだろという単純明快な話。ただ、同時にあるのが「最高のバッターと最低のバッター、最高の野手と最低の野手。どちらが勝利への相関関係が高いかといえば圧倒的に前者」というもの。カープによく言えることじゃないですかね!!!!
ただ、勝負事は野生の勘というものも必要なことがあるわけですよね。確率では測れない部分も当然あります。選手のコンディションやメンタル状態がそれですよね。ただ、選手の評価は数値化されるべきだと強く思います。
野球は確率のスポーツであるということは、あの名将・野村克也氏も再三申されていること。確率論である以上、試合運びには論理がなければならないし、チーム作りにもある一定の論理がなければなりません。マネーボールからは野球の本質を垣間見ることができ、とてもおもしろい一冊でした。