【書評】ID野球の父―プロ野球に革命を起こした『尾張メモ』再発見
非常に面白かった。
- 作者: 戸部良也
- 出版社/メーカー: ベースボールマガジン社
- 発売日: 2012/05
- メディア: 単行本
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尾張久次氏という日本のプロ野球で初めてスコアラーの人生を綴った本。スポーツ新聞記者として野球をウオッチする傍ら、野球が好きすぎて自分の仮説をゲームデータで検証することが病みつきになってしまった、最高の野球狂の人生を光と影を交えながらうまく描いてくれている。
1950年代と言えば・・あのマネーボールで取り上げられたビル・ジェイムズの野球理論本が出てくる20年前だし、野球は野球人にしかわからないことがあるというのが主体だった時代に、野球に科学を持ち込む試みを直接プロ野球の監督に掛けあって行うというこの行動力は驚嘆の一言。当時のメジャーリーグですら持ってない視点での分析だったそうで、50年前最も進んだ野球理論を持っていたのが尾張氏だったということ。
また、そのメモの内容が非常に細かく精密で一見するとわかりにくいがよく見るとわかるという、考えぬかれたものになっている。不思議なものでプロ野球の選手ほど自分の才覚にこだわり僕のような素人ほど数値にこだわる。この世に数値化出来ないものなんかない!情報技術の発展の根幹はそこなんだよ、実は。
スコアラーという存在自体が異端児だった時代に20年以上務め上げた記者生活に別れを告げ、新しいチャレンジに飛び込んで地道に「データで物を言わせる」ことでまわりの信頼を勝ち取り、南海を日本一優勝に導いた功績は本当に素晴らしいです。
1人でも多くの野球好きに尾張久次氏の果たした功績を知って貰いたいなと改めて思いました。ご一読を。
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