長嶋茂雄終身名誉監督が語る山田哲人の凄さが理論整然としている件
ミスターって凄い理論派だったの・・・?
―山田がトリプルスリーを達成。本塁打のタイトルまで取りました。
「体つきからすると、誰が見ても、4番タイプ、ホームランバッタータイプじゃないよね。それでもタイトルを取った。プロ野球80年の歴史を見て、初めてじゃないかな。こういう選手は」
―細身なのに打球が飛びます。
「技術的に優れているところは3つある。まずね。左足を上げた時に軸足に全部体重を乗せられるのがいい。そこから振りに行く時に、投手側へ上体が突っ込んだりまったくせずに、右サイドに重心を残したまま体の中心線を軸に回転できる。だから山田がアウトになるのは、みんな差し込まれた時。泳がされることはないからね」
―長嶋さんが考える理想のスイングです。
「そう。2番目はヒッティングポイントだな。内角は左足の前でさばき、真ん中は体の正面、外角球は右足の前まで呼び込んでスイングしている。コースによって打つポイントが変えられるから、同じスイングでレフトからライトまで広角に打てるわけ」
―コースによって打つポイントを変えられる選手は多くないかと。
「メジャー、日本のプロ野球を長く見てきたけど、なかなかいない。オレの好きなジョー・ディマジオ(ヤンキース)は内角も外角も全部、軸足の前まで呼び込んで56試合連続安打の記録を作った。あれはあれですごいよ」
―長嶋さんはポイントを変えられる数少ない一人です。
「だから素振りが大事なのよ。(左足)前、真ん中、軸足(の前)と3つのポイントを意識を持ちながらスイングするのが、重要なわけ」
―山田の場合は毎日のティー打撃で内角、外角を捉えるイメージを作っているとか。
「山田のあのスイングが日々の練習で作られたのか、自然にできたのか、今度、本人に会って聞いてみたいね(笑い)」
―で、3番目の長所は。
「手首、リストだね。この使い方が素晴らしいね。アドレスでできた手首の角度が、インパクトまで全く変わらない」
―手のひら側に折れたり、甲側にねじれたりしないと。リストの強さも使い方も…。
「そう! もう最高よ。バットのヘッドが立ったまま、シュッとインパクトへ入ってくる。だからね、速い球で懐攻められたら苦しいけど、山田にはこのリストワークがあるから対応できる」
―9月24日のDeNA戦(神宮)、26日の巨人戦(東京D)の最初の打席では、ともに内角球をさばいてホームランです。
「打った瞬間『ああファウル』って見てたら、それがことごとく切れずにフェアウェーよ(笑い)。完璧なスイングがあるから、バットマンにとって一番難しい内角高めもホームランにできる。去年から今年にかけてね、特にリストの使い方の精度がさらに上がってきた。それで成績もアップしてきたね」
―山田は足もあります。38本塁打にして34盗塁です。
「たとえばバッティングで失敗するでしょ。守りもうまくいかないって日もある。そんな時に山田はきっと走力でファンにアピールしようって気持ちになったんじゃないかな。オレ自身がそうだったから」
―長嶋さんは入団1年目の1958年、打率3割5厘で、37盗塁を記録されています。
「足が速かった頃はね。走塁も非常に重視していたからね。盗塁ももちろん、打った時も一塁から二塁って、次の塁をどんどん狙っていた。特に二塁から三塁を狙うのが好きだったなあ」
―そのシーズンは、一塁ベースの踏み忘れでホームランが取り消されて29発。翌年以降は打率3割、30本塁打以上は5度ありましたが、トリプルスリーは果たせませんでした。
「それだけ簡単ではないということだし、山田やソフトバンクの柳田が優れているということ」
―山田にはこれからどんな選手になってほしいと。
【Wトリプルスリー大解剖】(1)長嶋さん、山田のスイング「最高よ!」 (スポーツ報知) - Yahoo!ニュース
「今、山田は23歳でしょ。これからプレーヤーとしていい時期に入ってくるよね。今年、ひとまずトリプルスリーを達成したわけだから、今度はトリプルクラウンに挑戦してほしいね。それで盗塁王まで取れたらプロ野球で初めてだからね。やってもらいたいね」