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いつ野球見るの?今でしょ?!

主にセリーグを中心とした、プロ野球観戦日誌です。メジャーもあるよ。

【書評】用具係 入来祐作〜僕には野球しかない〜

完全に裏切られました。野球小僧のヤンチャしてたけど今は丸くなったよ的な回顧録でしか無いのではと高をくくっていたが、1つ1つの文章が濃密で地に足の着いた言葉が綴られており、ますます野球というスポーツが好きになりました。野球観戦を楽しめるのも裏方仕事あってなんだな、と。私が読んだ2014年度の野球本でベストの一冊です。

各章ごとに濃密なエピソードが書かれているんですけれども、かいつまんで書きます。

死ぬかと思った.....これがバッティングピッチャーか.....

本の中でそのように紹介されたいた過酷な職業、バッティングピッチャー。ボールを投げるだけと言えばそれまでですが、約30分間の登板機会の間に休むことなく淡々とボールを投げ入れ、トータルでは150球を超えるそうです。9回完投したよりも多くの球数を尋常ではないペースで投げ込む。それに、気持ちよく打たれることに神経を注ぐが故に、気持よく打球が飛ばないことで1球1球思い悩んでしまう。今のボールはなにか間違っていたのではないか、と。

これにかぎらず、裏方仕事は自分を消すのが仕事になりますので、精神的に非常にタフであることが求められると書いてありました。

用具係多忙すぎワロタ

ざっとキャンプ中とシーズン中でやらねばならない作業の内容が列挙されているのですが、「これをひとりでまとめきるのは無理だろ」というぐらい仕事量が多いのです。ビックリしました。ユニフォームの清掃業者とのやりとりや用具の予算管理、期間限定ユニの用意なども含まれていました。え、用具の整備だけじゃなくて調達もやるの?っていう。休む暇もない。ナイターの時は朝11時ぐらいに入っててっぺん超えることもザラみたいです。

亜細亜大学元監督・内田俊雄さんのピッチング論

「祐作。お前、ピッチングで大切なことってなんだと思う?」
「コントロールですよね。制球力だと思います。」
「ボール1個分を投げ分ける制球力などつくものではない。(中略) 打者のイメージするタイミングで打たせなければ勝ちなんだよ。そのためには何をすればいいか。とにかく打者の反応を見るんだ。」

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この打者のタイミングを取らせないということが、投球術ということなんでしょう。もちろん、投球技術の最たるものはストライクゾーンにボールを投げ込むということですが、タイミングさえ合わなければど真ん中の真っ直ぐでも打ち取ることが出来ます。でも、タイミングが合えばアウトローからボールゾーンへ落ちるスプリットでもセンター前に運ばれてしまいます。

敵を知り己を知れば、百戦危うからず。そういうことなんでしょう。

巨人軍とは、常に尻に火が付いている環境

巨人軍のような資金も芳醇で人気のある球団は、色んなルートから優秀な選手が毎年やってきます。ごく一部のレギュラー選手などを除けば、常に自分の居場所を求め続ける必要があるとのこと。競争の激しさが12球団随一。若手がどんなに活躍してもそう簡単にはレギュラーとして認められないので、浮ついた気持ちでいることが許されない。チームの中でも監督コーチフロントOBを含め、様々な立場がからみ合いつつ厳しく睨み合っているそうなのです。要はずっと針のむしろの上に座っているようなもんですね・・・。この独特な空気感に戸惑う移籍選手がとても多いそうです。

が、この厳しく自律を促される環境にいることで選手1人1人の意識の高さにつながり、誇りとなり、勝負どころを左右するチーム力へとつながっていく。規律が自律を産みチームを高みに導くというのが、巨人軍の伝統なのでしょう。

なるほど、さすがは大正義讀賣ジャイアンツ。そうでなければ。弱い巨人軍を倒しても嬉しくともなんともない。倒しがいがあります。

これだけでは書ききれない

その他にも野球にまつわる色んなエピソードが書いてあり、特に冒頭で述べられている桑田真澄氏の粋なはからいにはシビれました。野球が好きなら絶対楽しんでもらえる1冊です。自信を持って、おすすめさせて頂きます。